僕は料理するのが好きだ。
ネットでもよく料理の動画やレシピを見たりしている。
そういうのを見ていると「店の味を超えた」なんて書いて自慢げにレシピを載せているYouTuberなんかがいたりする。
いやちょっと待て。
他人が店の味超えてるって褒めるのはいいけど、自分で言うのは違くない?
すごいどうでもいい話なんだが、ずっと思ってる事があるからそれについて書きたい。
どこの店も好き放題作ってるわけじゃないんだよ
店というのは利益を出さないといけない。だから料理をするにも原価や手間、人件費の問題がある。手早く出す必要もある。世の中高級レストランばかりではない。大衆レストランの方が多いのだ。
贅沢に好きな食材買って好きなだけ時間かけて作っておいて店の味を超えたなんて安易に言うのは違うんじゃないか、などと思っている。そもそも家で好きに作れる時点で相当優位に立ってると思うべき。
店から利益と時間の概念を取ってもまだ店を超えられる自信があるだろうか?
簡単なもので、サラダ。
- まとめて切っておいて、軽く水気を切ったらお皿に盛っておいてラップをかけて冷蔵庫に置いておく。
- 食べる直前に葉物は水にさらしてシャキッとさせる。食べる量だけ直前にちぎったり切ったりして、水気は丁寧にしっかりと切る。最後に綺麗に盛る。
手間をかけようと思えば別にサラダひとつでもここまで手間をかけられる。
同じ野菜を使ったら2の方が美味しいに決まっている。丁寧に盛ったら視覚的にも美味しそうだろうし、2で使う野菜の方がランクが低かったとしても2の方が美味しくなる(美味しく感じる)可能性すらある。
家計の事も考えながら食材を買って毎日料理をしている奥さんがいたとして。旦那さんが休みの日だけあれこれ好きに食材買ってきて仕込みからしっかりやって手の込んだものを作って丁寧に盛り付けて「俺が作った方がセンスあるな」なんて言った日にはとんでもない事になるだろう。
最高級の高価なサケの大粒のいくらを買ってご飯の上にそれをぶちまけていくら丼作って、1000円くらいのマスのいくら丼を出している街中にあるような500円くらいからの安い海鮮丼店と比べて「店超えたわ」とかわざわざ言う人いないでしょう。
例えは極端だけど、冷静に考えたらほとんどそれと同じこと言ってない?
店ってのはそういう制限とも戦った上で料理提供しているんだから。
そもそも「店」という定義が曖昧。
店って言うけど、高級レストランの料理を本当に超えとるんか。そんな簡単に超えられるわけがないだろ。
では、大衆レストランの料理と比べて超えたと言っているのだろうか。大衆レストランであればかけられる原価も手間も限界がある。客単価が高級店より安いので回転率も上げないといけない。
どこまで手間をかけるかのバランスも考えた上で効率的に、かつ高いクオリティの料理を提供して利益まで出している。
その時点で料理を提供するという点において素人が簡単に真似できない域に達している。完成までのスピードも技術のうち。
そんなのを超えたって、ちょっと料理を続けてればそりゃ利益も時間も心配もなければ大衆レストランのレベル超えてくる一品が出来て当たり前だろう。
高級レストランの厨房風景とかYouTubeで見るのが好きなんだが、あれを見てると高級レストランですら仕込みとかで時間には追われていると思う。
正直言って店の味を超えたなと思う事は僕もある。
ただ、自分でそれを言わない。
・・いやもしかしたら過去に言ったかも知れないけど今は一切そんなことは思わない。
店の味は超えられても、シェフの味は超えられない。
よく、店で食った料理を真似て作ってみる事がある。実際店で食った時より美味しいなと思えるクオリティのものが出来ることはある。だけどそれは手間も時間もかけているし、塩気ひとつ取ったって自分の好みに合わせてるんだから当たり前だと思っているし、それが分かっているから自分で言った事はない。
まあ"味付けをする"というのは簡単な事ではない。特に想像している味にする事には何を使っているか考えたりする事が必要なので経験や技術がいるけど。
たださっきも書いたけど家で好きに作ってる時点で優位に立ってるから、同じ条件で戦ったらプロの”シェフ”の味を越えられる自信は1ミリもない。
食材を目利きするところから勝負して、魚や鶏ならさばくところからやれなんて言われたらますます敵わない。
最後に。とはいえ別にそこまで本気で憤慨してない。
あれこれ書いてきたが、そんなに本気で憤慨しているわけではない。ちなみに僕の本業が料理人なわけでもない。
まぁ、店超えたって書いちゃえば凄み伝わるから。それは分かる。
ただ、なんか店の味超えましたとか、このレシピ美味すぎてもう店では食べられなくなりますみたいなちょっと安直なタイトルを見ると、店を引き合いに出すなよとか、好きに作ってんだから当たり前だろだとか、そういう事を僕はよく思います。
それではまた。